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【2026年版】猫の慢性腎臓病|IRIS分類の改訂点とこれからの治療2026年11月01日

「愛猫の腎臓の数値が高いと言われた」
「慢性腎臓病と診断され、ステージ2と説明された」

このような状況に、今後どのような治療が必要になるのか、病気がどこまで進んでいるのか、不安を感じている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

猫の慢性腎臓病は、長期的な治療や体調管理が必要になる病気です。同じステージであっても尿検査や血圧の結果によって、必要な治療が異なる場合があります。

今回は、ステージごとの特徴や検査結果の見方、国内で使用される薬と治療の考え方について、2026年に改訂された「IRIS分類」の変更点も踏まえながら詳しく解説します。

慢性腎臓病の原因や主な症状など、病気の基本については、こちらの記事をご覧ください。
猫の慢性腎臓病の症状と治療法|多飲多尿・食欲低下は要注意

■目次
1.猫の腎臓病における「ステージ」の考え方
2.猫の慢性腎臓病の検査・治療で2026年に変わったこと
3.現在の治療法|薬と日々の管理(食事・貧血)
4.ご家庭で見ていただきたい3つのポイント
5.まとめ|当院での慢性腎臓病への向き合い方

猫の腎臓病における「ステージ」の考え方


猫の慢性腎臓病は、腎臓の働きがどこまで落ちているかによって、ステージ1から4までの4段階に分けて考えます。この分類は、IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)という専門家の団体が示している国際的な基準です。

治療方針を考える際は、主に「クレアチニンとSDMA(腎臓の働きを調べる血液検査の数値)」「尿へのタンパクの漏れ」「血圧」を組み合わせて評価します。

下の表は、ステージごとに確認する数値と、検討されることをまとめたものです。

ステージ1 ステージ2 ステージ3 ステージ4
クレアチニン(mg/dL) <1.6 1.6〜2.8 2.9〜5.0 >5.0
SDMA(µg/dL) <18 18〜25 26〜38 >38
検討されること ・腎臓に負担のかかる薬に注意する
・新鮮な水をいつでも飲めるようにする
・背景にある病気を調べる
・数値の変化を追う
■ステージ1の内容に加えて

・食事を中心にリンを目標の範囲に保つ
・腎機能の低下を抑える薬
■ステージ2の内容に加えて

・貧血の確認と治療
・吐き気や食欲低下への対応
・脱水を防ぐ
■ステージ3の内容に加えて

・食事や水分、薬をとりやすくするためのサポート

 

また、どのステージでも、次の2つの項目を組み合わせて見ます。

組み合わせて見るもの 区分
尿へのタンパクの漏れ(UPC比) <0.2 タンパク尿なし / 0.2〜0.4 境界域 / >0.4 タンパク尿あり
血圧(収縮期血圧 mmHg) <140 正常 / 140〜159 高血圧前段階 / 160〜179 高血圧 / 180以上 重度高血圧

参考:IRIS「IRIS Staging of CKD (Modified 2026)」「Treatment Recommendation for CKD in Cats (2026)」(iris-kidney.com)

例えば、「ステージ2で、タンパク尿があり、血圧も高い猫」と、「ステージ2で、タンパク尿も血圧も問題ない猫」では、同じステージでも検討することが変わります。
どのステージでも、タンパクの漏れが続く場合や血圧が高い状態が続く場合は、それぞれへの対応が必要です。

また、検査結果は一時的に変動することがあるため、1回の数値だけで判断せず、継続して確認することが大切です。 定期的な検査で各項目の変化や組み合わせを確認し、治療方針を検討します。

<基本の確認項目「クレアチニン」と「SDMA」>
ステージの判定には、血液検査で測定するクレアチニンとSDMAという2つの指標を用います。

・クレアチニン(筋肉から出る老廃物):腎臓の機能が低下し、うまくろ過できないと、血液中にたまって数値が上がる
・SDMA(主に腎臓から排出される物質):腎機能の低下をクレアチニンより早い段階で捉えられる場合がある

また、クレアチニンは筋肉量の影響を受けるため、痩せた猫では数値が低めに出ることがあり、筋肉量の影響を受けにくいSDMAもあわせて評価することが大切です。

<「タンパクの漏れ」と「血圧」も重要な要素>
ステージに加えて「尿にタンパクが漏れているか」と「血圧」の2つの要素も確認し、治療方針を考えるうえで重要な情報とします。

・尿へのタンパクの漏れ:本来は尿にほとんど出ないタンパクが、どれだけ漏れているかを尿検査で測る
・血圧:血圧が高い状態が続くと、腎臓だけでなく、目や心臓、脳にも影響が及ぶことがある

血液検査上では同じ「ステージ2」であっても、この2つの結果によっては、異なる治療を選択することがあります。

猫の慢性腎臓病の検査・治療で2026年に変わったこと


2026年に改訂された「IRIS分類」では、ステージの区切り方や、タンパク尿・血圧の基準といった分類の大枠は変わっていません。しかし、今回の改訂では、治療や評価の基準について、より具体的に示された点があります。主な変更点は次の3つです。

◆クレアチニンとSDMAの数値の扱いがはっきりした
クレアチニンとSDMAで示されるステージが異なる場合について、2026年版では、より進んだステージとして分類・治療するための具体的な数値基準が示されました。 例えば、クレアチニンがステージ1の範囲でも、SDMAが一定の基準を継続して上回る場合は、ステージ2として分類・治療することがあります。

◆貧血の治療を始める目安が数値で示された
慢性腎臓病に伴う貧血において、血液中の赤血球の割合(ヘマトクリット)が25%を下回る場合や、25〜28%で貧血が続く場合に、治療を検討する目安がより具体的に示されました。

◆高血圧を評価するタイミングがより明確になった
血圧の高さや臓器への影響に応じて、再評価するまでの期間や治療を検討するタイミングが、より具体的に整理されました。

なお、IRISで示されている治療でも、国や地域によって薬の承認状況や使用条件が異なるため、日本国内では対応が変わる場合があります。実際に薬を使用するかどうかは、検査結果や体調をもとに判断します。

現在の治療法|薬と日々の管理(食事・貧血)


慢性腎臓病の薬は、「何を目的とした薬か」で整理すると分かりやすくなります。

慢性腎臓病そのものへの治療だけでなく、タンパク尿、高血圧、貧血など、関連する状態に対して薬を検討することがあります。 実際にタンパク尿や高血圧に対する薬は、ステージにかかわらず検討されます。

以下の表では、猫の慢性腎臓病や、それに伴う症状の治療に用いられる、国内承認薬の主な例をまとめました。

目的 関連する指標 成分名(製品名)
腎機能の低下を抑える 腎機能・病状

※ステージ2・3
ベラプロストナトリウム(ラプロス)
尿へのタンパクの漏れを抑える タンパク尿 テルミサルタン(セミントラ)、ベナゼプリル(フォルテコール錠など)
血圧を下げる 血圧 テルミサルタン(セミントラ)、アムロジピン(アモディップ錠)
腎臓病による貧血の治療 貧血 猫エリスロポエチン製剤(エポベット)、モリデュスタットナトリウム(バレンジン)
尿毒症の症状が出るのを抑える ― 球形吸着炭(コバルジンなど)

また、人間の治療に使われている薬を猫に応用する研究も進められており、今後、新たな治療の選択肢が増えることが期待されています。

<療法食はどうする?>
腎臓病の治療では、食事管理も重要な役割を担います。特に大切なのが、血液中のリンを次の目標の範囲に保つことです。

・ステージ2…4.5mg/dL未満(ただし2.7mg/dLを下回らない)
・ステージ3…5.0mg/dL未満
・ステージ4…
6.0mg/dL未満

食事だけで目標に届かない場合は、リン吸着剤を組み合わせることがあります。
また、血液中のリンが目標範囲内でも、FGF-23などの指標を参考に、食事によるリン制限を検討することがあります。リンの値だけでは分かりにくい変化を評価するための指標のひとつです。

<貧血への対処>
腎臓病が進むと、腎臓でつくられる、赤血球の産生を促すホルモン(エリスロポエチン)が不足し、貧血が表れることがあります。

治療の選択肢として、IRISのガイドラインにも挙げられているHIF-PH阻害薬のひとつで、国内で猫の腎性貧血に対して承認されている薬には「モリデュスタットナトリウム」があります。
また、重度の貧血の場合には輸血が検討されることもあります。

ご家庭で見ていただきたい3つのポイント


家庭で見ていただきたいポイントは、体重・飲水量・食欲というイメージイラスト

体重や飲む水の量、食欲の変化は、猫の慢性腎臓病の進行や体調の変化に気づくための大切なサインです。

◆体重
月に1~2回、同じ時間帯に量ってメモしておいてください。 ゆるやかな体重の減少は、見た目では気づきにくい変化です。

◆飲む水の量
水入れの水が減る量を毎日確認し、普段と比べて飲む量が増えたり減ったりしていないかを記録しましょう。

◆食欲
いつものフードを残すようになった、好みが変わった、食べるまでに時間がかかる、といった様子を教えてください。

小さな変化も記録して診察時にお伝えいただくことで、治療や日々の管理を見直す手がかりになります。

まとめ|当院での慢性腎臓病への向き合い方


当院では、猫の慢性腎臓病に対して、ステージ分類に加え、尿へのタンパクの漏れや血圧、貧血なども確認することを大切にしています。クレアチニンやSDMAの数値だけで判断せず、これまでの経過や体調なども踏まえ、総合的に評価しながら治療方針を検討しています。

また、猫の慢性腎臓病に関する研究は現在も進められており、治療の選択肢や考え方も少しずつ変化しています。当院でも、新しい獣医学の知見を取り入れながら、愛猫の状態や飼い主様のご希望に合わせた診療に努めています。

「ステージについて説明を受けたけれど、よく分からなかった」「今の治療を続けてよいのか不安」といったお悩みがある飼い主様も、お気軽に当院へご相談ください。

腎臓病の基本や症状については、猫の慢性腎臓病の症状と治療法|多飲多尿・食欲低下は要注意もあわせてご覧ください。

 

■監修者 リアンアニマルクリニック 院長 齋藤 仁裕(獣医師)
院長プロフィール

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<参考文献>
International Renal Interest Society(IRIS). IRIS Staging of CKD(Modified 2026).https://www.iris-kidney.com/iris-guidelines-1(2026年10月28日閲覧)
International Renal Interest Society(IRIS). IRIS Treatment Recommendations for CKD in Cats(2026). https://www.iris-kidney.com/iris-guidelines-1(2026年10月28日閲覧)
International Renal Interest Society(IRIS). New Therapeutic Approaches to Management of Anemia and Iron Metabolism in Chronic Kidney Disease. https://www.iris-kidney.com/treatment-of-anemia-in-cats-with-ckd(2026年10月28日閲覧)
農林水産省 動物医薬品検査所.「動物用医薬品等データベース」(ラプロス).https://www.vm.nval.go.jp/public/detail/16941(2026年10月28日閲覧)
東京大学大学院農学生命科学研究科(2026年6月10日).「猫の慢性腎臓病に伴う貧血に対する新たな治療候補――ロキサデュスタットの安全性と造血作用――」.https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20260610-2.html(2026年10月28日閲覧)

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