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猫の慢性腎臓病について|気になる症状や治療法を解説2024年01月22日

慢性腎臓病は猫の疾患として非常に有名です。15歳以上の猫の約80%が慢性腎臓病であるといわれており、特に高齢の猫では注意が必要です。

腎臓の最も重要な働きは血液をろ過して尿をつくり、体内の老廃物や毒素を体外に排泄することです。その他にも、ナトリウムやカリウムなどの血液中の電解質バランスを一定に保つ、血圧を調節する、赤血球をつくる、といった生命維持に欠かせない重要な役割も担っていますこれらの腎臓の機能がゆっくりと低下していくのが慢性腎臓病です。

この記事では猫の慢性腎臓病の原因や症状、治療法などについて詳しく解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因


高齢猫で慢性腎臓病が多発するはっきりとした原因は解明されていませんが、特定のウイルス感染の影響や、猫の特徴としてあまり水を飲まないことなどが関連していると考えられています。

また、近年ではAIM (apoptosis inhibitor of macrophageの略称)という遺伝子が猫では十分に機能しておらず、この遺伝子が猫で慢性腎臓病が多い原因ではないかと議論され始めました。またそれ以外にも、腎炎や腎臓腫瘍、尿路結石などで腎臓の機能が低下し、慢性腎臓病に移行するケースもあります。

先天的な原因としては、腎形成不全 (腎臓が正常に発育しない)、ヒマラヤンやペルシャなどの特定の猫種に多い多発性嚢胞腎 (腎臓の中に多くの嚢胞が形成されてしまう)なども腎臓の機能低下につながり、慢性腎臓病の原因となってしまいます。

 

症状


慢性腎臓病という病気の厄介な点は、飼い主様が異変に気づく頃には慢性腎臓病が進行していることです。

腎臓の機能の50〜75%程度が損なわれるまでは、左右どちらかの腎臓の代償機能や、体の恒常性などによって食欲低下や体重減少などの目立った症状が現れないため、気が付きにくい病気です。

しかし、慢性腎臓病が進行すると、以下のような症状が自宅でみられるようになります。

多飲多尿 (水をよく飲み、おしっこの量が増える)
元気、食欲の低下(どこか調子が悪そう)
毛並みが悪くなった
嘔吐する回数が増えた
便秘
口内炎

他には、貧血や高血圧といった症状も現れます。

 

診断方法


猫の慢性腎臓病は身体検査、尿検査、血液検査、レントゲン検査、エコー検査などの結果を総合的に評価して行います。

身体検査
五感を使ったフィジカルイグザミネーションにより、体の異常がないか、脱水症状は見られないか調べます。

血圧測定
血圧が高い方が慢性腎臓病の進行が早いため、高血圧かどうか確認します。

尿検査
尿比重の低下、タンパク尿などが検出されないか確認します。

血液検査
慢性腎臓病の診断において血液検査は欠かせません
慢性腎臓病ではBUN (尿素窒素)、クレアチニン、SDMAが上昇することがほとんどです。
中でも、SDMAはBUNやクレアチニンが上昇する前から異常値を示すため、早期発見に非常に有用です。その他の項目としては、リン、カリウム、アミラーゼ、リパーゼの上昇、アルブミンの低下などがみられることもあります。

レントゲン検査
腎臓のサイズの測定や、腎臓腫瘍、尿路結石の有無などを評価します。

エコー検査
腎臓や膀胱内部の状態を確認します。

 

治療方法


残念ながら慢性腎臓病によって一度失われた腎機能は、回復することはありません
そのため、慢性腎臓病を早期に発見して適切な治療を行い、腎機能が低下するスピードを遅らせることが何よりも大切です。

具体的な治療としては、食事療法や皮下輸液、慢性腎臓病により発生した諸々の症状への対症療法が中心となります。

食事療法
腎臓病専用の療法食 (主にタンパク質、リン、ナトリウムの含有量が制限されている)を食べることで腎臓への負担を軽減させる。

皮下輸液
脱水状態が続くと腎臓に大きな負担がかかり、腎機能が大きく低下します。脱水の補正や腎機能の維持に加え、一般状態の改善も狙って定期的に皮下輸液を行います。

対症療法
血圧を下げる薬や、尿毒症により消化器症状がみられる場合は胃腸薬などを処方します。

その他にも、当院ではオゾン療法 (適切な濃度のオゾンを用いて免疫の向上や、抗酸化作用などの効果を狙う)や慢性腎臓病に有効な漢方薬やサプリメントを処方することも可能です。

また、腎移植も紹介で行っております。ご希望の方は当院までご相談ください

 

予防法とご家庭で注意すること


現時点で猫の慢性腎臓病の発症を完全に予防する方法はありませんが、普段からたっぷりの新鮮な水を用意すること、猫に塩分量の高いおやつや人間の食べ物を食べさせないことは非常に大切です。

ご家庭では愛猫の様子を注意深く観察し、猫が5〜6歳を迎えたら最低でも1年に1回は血液検査を含めた全身の健康診断を受けるようにしましょう

 

まとめ


特に高齢猫は慢性腎臓病になるリスクが非常に高く、猫にとっては避けられない病気といわれることもあります。慢性腎臓病になっても適切な治療を行い、進行を遅らせることができれば、寿命を全うすることも不可能ではありません。

普段から定期的に健康診断を受診し、慢性腎臓病の早期発見・早期治療を心がけましょう。

 

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<参考文献>

Marino, Christina L., et al. “Prevalence and classification of chronic kidney disease in cats randomly selected from four age groups and in cats 

recruited for degenerative joint disease studies.” Journal of feline medicine and surgery 16.6 (2014): 465-472.

 

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