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「麻酔は難しい」と言われた飼い主様へ|高齢・持病のある犬や猫の術前検査とリスク管理2026年03月01日

「高齢だから麻酔は難しいかもしれませんね」
「歯が痛そうですが、今は何もできそうにありません」

動物病院でこのように告げられ、戸惑いやショックを感じたことがある飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

麻酔には不安がある一方で、愛犬・愛猫の痛みや不調をそのままにしておくこともできない——このジレンマは、とても切実なものです。たしかに、高齢の子や持病のある子の麻酔には、若く健康な子と比べて注意すべき点が増えます。しかし、麻酔の可否は年齢や持病の有無だけで決められるものではありません

今回は、当院がどのような視点で麻酔の可否を判断しているのか、また、術前・術中・術後にどのようなリスク管理を行っているのかについて、ご紹介します。

■目次
1.「高齢=麻酔不可」ではない理由|判断軸は“年齢”ではなく“状態”
2.リアンアニマルクリニックの術前検査|麻酔前に“どこまで調べるか”
3.持病がある子への麻酔管理|心臓病・腎臓病の場合
4.術中・術後の管理|“かけた後”までが麻酔管理
5.まとめ|「怖いからやらない」ではなく「理解して選ぶ麻酔」

 

「高齢=麻酔不可」ではない理由|判断軸は“年齢”ではなく“状態”


まず前提として、年齢が上がるほど麻酔のリスクが高まるのは事実です。加齢に伴い、肝臓や腎臓、心臓といった臓器の働きが低下し、麻酔薬の影響を受けやすくなることがあります。

そのため、万が一のリスクを避ける目的や、十分な検査・管理体制が整っていないことを理由に、高齢の子の麻酔や手術を見送る判断をする動物病院もあります。

一方で、本当に重要なのは年齢そのものではなく、今の臓器機能や全身状態です。当院では、年齢だけを理由に麻酔の可否を決めることはせず、術前検査によって医学的に評価したうえで「可能かどうか」を慎重に判断しています。

 

リアンアニマルクリニックの術前検査|麻酔前に“どこまで調べるか”


リアンアニマルクリニックの術前検査の説明イラスト|血液検査・レントゲン検査・血圧測定・超音波検査・心電図検査を受ける犬と猫のイメージ

麻酔を検討する際、当院では術前検査を重視しています。特にシニア期の犬・猫や、持病がある場合には、以下のような検査を組み合わせて全身状態を確認します。

血液検査(腎臓・肝臓・電解質など)
レントゲン検査(胸部・腹部)
超音波検査(心臓・腹部)
血圧測定
心電図検査

これらの検査によって、麻酔に伴うリスクがどこに潜んでいるか、どのような管理が必要かを具体的に把握します。

その結果、すべての子に麻酔ができるわけではありません。リスクが高いと判断した場合には、時期を改める、別の治療法を検討するなど、無理をしない選択をご提案することもあります。

 

持病がある子への麻酔管理|心臓病・腎臓病の場合


持病のある子の麻酔についてご相談を受ける際、飼い主様からは「この子に麻酔をかけて、本当に大丈夫でしょうか」という切実な声をよく耳にします。

当院では、その不安に対して「できます/できません」と即答するのではなく、何がリスクになり得るのか、どう備えれば安全性を高められるのかを一つずつ整理しながら判断することを大切にしています。

<心臓病がある場合>
心臓病のある子では、麻酔中の体のバランスが崩れやすくなることがあります。特に注意が必要なのが、体内の水分量です。

点滴は麻酔管理に欠かせないものですが、多すぎると心臓に負担がかかり、肺に水がたまる「肺水腫」を引き起こすリスクがあります。そのため当院では、次のような対応を行っています。

その子の心臓の状態に合わせて、点滴の量を細かく調整
必要に応じて心臓を守る薬を併用
専門的なモニタリング下で、循環や呼吸の状態を常に確認

「とにかく麻酔をかける」のではなく、心臓に無理をさせずに管理できるかどうかを重視して判断します。

<腎臓病がある場合>
腎臓病がある子の場合、私たちはさらに慎重になります。というのも、腎臓は一度ダメージを受けると回復が難しい臓器であり、麻酔中のわずかな血圧低下が、術後の状態に大きく影響することがあるからです。

そこで当院では「いきなり麻酔をかけない」ことを前提にした管理を行っています。

手術前日から1泊入院し、事前に点滴を行う
体の中にしっかり水分が行き渡った状態をつくり、腎臓への血流を安定させる
その状態であらためて検査を行う

こうした準備を経たうえで「この状態であれば麻酔に耐えられる」と判断できた場合にのみ、次のステップへ進みます。

このように当院では「やる・やらない」を急いで決めるのではなく、しっかりと準備を整えたうえで判断することが、持病のある子にとって何より大切だと考えています。

 

術中・術後の管理|“かけた後”までが麻酔管理


麻酔中のモニタリングと術後ケアの様子|心拍数・血圧・酸素飽和度を確認しながら管理される犬・猫の麻酔管理イメージ

麻酔についてお話しするとき「麻酔をかける瞬間」だけを想像して不安になられる方が多いのですが、実際には麻酔は“かけて終わり”ではありません。眠っている間はもちろん、目が覚めてから落ち着くまでの時間も含めて、一連の流れとして管理していくことがとても重要だと考えています。

<術中の管理>
麻酔中は、犬や猫が自分で不調を訴えることができません。そのため当院では、心拍数・血圧・酸素飽和度などを専門のモニターで常に確認しながら、体の変化を細かく見守っています。

点滴を継続し、数値や状態に応じて薬剤を調整することで「いつもと違う兆し」があれば、すぐに対応できる体制を整えています。

<術後のケア>
麻酔から覚めたあとも、管理は続きます。呼吸の様子や体温、反射の戻り方、痛みがきちんとコントロールできているかなどを、一つひとつ確認していきます。

特に高齢の子や、心臓・腎臓に持病がある子では「目が覚めた=安心」ではなく、その後の体調変化にも注意が必要です。そのため当院では、必要に応じて入院期間を長めに設定し、落ち着くまでしっかり見守ることもあります。

こうした術中・術後の管理内容については、事前にできるだけ分かりやすくご説明し「何が起こり得るのか」「どこまで備えているのか」を飼い主様と共有したうえで進めています。分からないまま進むのではなく、理解したうえで選択していただくことも、麻酔管理の大切な一部だと考えています。

 

まとめ|「怖いからやらない」ではなく「理解して選ぶ麻酔」


麻酔には、どうしても一定のリスクが伴います。だからこそ当院では「きちんと調べる」「その子の状態に合わせて備える」「無理がある場合は見送る判断も含めて考える」ことを大切にしています。麻酔ができるかどうかは、年齢だけで決めるものではなく、検査によって今の体の状態を正しく評価したうえで判断すべきものだからです。

また、高齢や持病があるからといって、痛みや不調を我慢し続けるしかないとは限りません。適切な準備と管理を行うことで、歯科処置や手術が選択肢になるケースもありますし、その結果、生活の質が大きく改善することもあります。

当院が何より大切にしているのは、検査に基づいた医学的な判断を行い、その内容を丁寧にお伝えしたうえで、飼い主様と一緒に決めていくことです。「できる」「できない」を一方的に伝えるのではなく「なぜそう判断したのか」「他にどんな選択肢があるのか」を共有しながら、その子にとって最善の道を探していきたいと考えています。

 

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