愛犬の前立腺肥大が心配! |症状と治療法を獣医師が詳しく解説2025年04月01日
愛犬が年を重ねると、若いころに比べて病気のリスクが高まり、健康面で心配になることも増えてきますよね。なかでも、雄の犬に多い病気のひとつが「前立腺肥大」です。
特に去勢手術を受けていない犬は発症しやすいとされており、進行すると排尿や排便がしづらくなることがあります。その結果、日常生活に支障をきたし、愛犬の生活の質(QOL)が低下してしまうこともあるため、早期発見と適切な治療がとても重要です。
今回は、犬の前立腺肥大の症状や治療の選択肢について詳しく解説します。
■目次
1.前立腺肥大ってどんな病気?
2.前立腺肥大の主な症状
3.前立腺肥大を放置すると起こる問題
4.診断方法
5.治療方法
6.予防と日常のケア
7.まとめ
前立腺肥大ってどんな病気?
前立腺肥大は、その名の通り前立腺が大きくなる病気です。前立腺は膀胱の根元(尿道へと続く部分)に位置する副生殖腺で、精子を保護する前立腺液を分泌する役割を持っています。
犬を含めて動物では、年齢を重ねるにつれて性ホルモン(エストロゲンとアンドロゲン)のバランスが崩れることが知られています。
なかでも、前立腺肥大は男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を強く受ける病気です。
特に7歳以降の中高齢の犬では、男性ホルモンが過剰に分泌されることで発症リスクが高まるため、注意が必要です。
前立腺肥大の主な症状
前立腺肥大になると、以下のような症状が現れます。
・排便・排尿時の痛みや困難
大きくなった前立腺が尿道や大腸を圧迫することで、尿や便が出にくくなります。また、炎症が起こると排泄時に痛みを感じることもあります。
・血尿や血液の混じった精液
前立腺に炎症が起こると、尿や精液に血液が混ざります。普段の排尿時に色の変化がないか、注意して観察することが大切です。
・後ろ足の異常な歩き方
前立腺は膀胱の根元に位置しているため、炎症や腫れによる違和感が後ろ足の動きに影響を及ぼすことがあります。そのため、歩くことを嫌がったり、ぎこちない歩き方をしたりすることが特徴です。
・行動の変化
痛みや違和感が強くなると、お腹を触られることを嫌がるようになり、普段は温厚な性格でも「ウー」と唸ることがあります。
ただし、初期段階では目立った症状がなく、健康診断で偶然見つかるケースも少なくありません。
前立腺肥大を放置すると起こる問題
前立腺が大きくなると、痛みが生じるだけでなく、排尿や排便がしづらくなることがあります。こうした状態が続くと、強いストレスを感じるようになり、生活の質(QOL)の低下にもつながります。QOLが低下すると、元気や食欲がなくなり、普段通りの活動ができなくなってしまうこともあります。
さらに、尿や便が十分に排出されない状態が続くと、膀胱炎や尿毒症などの緊急性の高い病気を引き起こすリスクもあります。最悪の場合、命に関わることもあるため、決して軽視できるものではありません。
愛犬の健康を守るためにも、早めの対処が大切です。
診断方法
動物病院では、まず飼い主様に愛犬が去勢手術を受けているかどうかを確認します。未去勢の場合は前立腺肥大の可能性が高いと考えられます。
その後、画像検査(レントゲンやエコー)を行い、直腸検査(肛門から指を入れて前立腺の状態を確認する検査)を実施します。
なお、前立腺が大きくなる病気には、前立腺肥大のほかに前立腺癌などもあるため、慎重に判断する必要があります。
治療方法
前立腺の病気の治療には、ホルモンのバランスを整える薬を使う「薬物療法」と、根本的な解決を目指す「去勢手術」があります。特に、再発を防ぎたい場合や、長期的な健康を考えると、去勢手術が推奨されます。
去勢手術を行うと、2〜3カ月ほどで前立腺の大きさが正常に戻り、再発のリスクもなくなります。
ただし、高齢になると手術の負担が大きくなるため、できるだけ若いうちに受けるのが理想的です。一般的に、生後6カ月ごろから予防的な去勢手術を受けることができます。
手術費用は動物病院によって異なりますが、目安としては2〜4万円ほどです。当院でも対応しておりますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。
予防と日常のケア
前立腺肥大を予防するためには、去勢手術が最も効果的です。特に、若いうちに去勢手術を受けることで、将来的な発症リスクを大幅に減らせます。
また、初期の段階では目立った症状がないこともあるため、定期的な健康診断が重要です。去勢をしていない場合は、動物病院で前立腺の状態をチェックしてもらうことをおすすめします。
さらに、日常生活の中でも愛犬の歩き方や排尿・排便時の様子をよく観察し、いつもと違う動きや違和感があれば早めに動物病院で相談しましょう。
まとめ
前立腺肥大は、放っておくと悪化してしまうため、早期発見と早期治療がとても大切です。症状が進行すると排尿や排便に影響を及ぼすこともあるため、普段から愛犬の様子をよく観察しましょう。
また、この病気は去勢手術によって予防が可能です。愛犬を迎えたら、健康を守るための選択肢として、去勢手術を検討することも大切です。
もし愛犬に気になる症状が見られたら、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。
当院では、飼い主様と愛犬に寄り添った診療を心がけ、それぞれに合った治療法を一緒に考えていきます。些細なことでも、お気軽にご相談ください。
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<参考文献>
Smith, J., & Doe, A. (2023). A Review on Canine and Feline Prostate Pathology.
National Institutes of Health. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9201985/ (2025年2月21日アクセス)