佐倉市で猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)にお悩みの飼い主様へ|早期発見が愛猫の命をつなぐカギになります2025年06月11日
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルスが体内で変異を起こすことによって発症する、非常に重篤な病気です。
かつては「治療が難しい病気」とされており、診断された場合の生存率もごくわずかでした。しかし近年では、研究の進展により新たな治療法が登場し、希望が持てるケースも確実に増えてきています。
今回は、猫のFIPについての基本的な知識から、診断や治療の流れ、そして飼い主様が愛猫のためにできるサポートまで、わかりやすくお伝えいたします。
■目次
1.FIPの症状と早期発見のポイント
2.診断方法について
3.治療法
4.FIPと診断された猫と飼い主様へ
5.FIPに関するよくある質問(Q&A)
6.まとめ
FIPの症状と早期発見のポイント
FIPには「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」の2つのタイプがあり、それぞれで見られる症状が異なります。
<ウェットタイプの主な症状>
ウェットタイプでは体内に液体がたまりやすく、以下のような症状が見られます。
・腹水:お腹に液体がたまって、ポッコリと膨らんで見えることがあります。
・胸水:胸の中に液体がたまることで呼吸が浅くなり、苦しそうに見えることがあります。
・食欲不振:食べる量が減り、体重が落ちてしまうこともあります。
・発熱
・元気がなくなる:以前のように遊ばなくなり、じっとしていることが増えます。
<ドライタイプの主な症状>
一方、ドライタイプでは体内に水がたまることはあまりありませんが、さまざまな臓器に炎症が起こるため、症状が多岐にわたります。
・長引く発熱:通常の風邪やウイルス感染と異なり、抗生剤などで熱が下がらないことが多いです。
・食欲不振:食べる量が減り、体重が落ちてしまうこともあります。
・神経症状:ふるえやけいれん、歩き方の異常などが見られることがあります。
・腎不全・肝不全:臓器に炎症が及ぶことで、腎臓や肝臓の機能が低下する場合があります。
・消化器症状:下痢や嘔吐などが続くことがあります。
・目の症状(ぶどう膜炎など):眼の充血、視力の低下、眼振(目が揺れる)などが現れることがあります。
特にドライタイプは、症状がはっきりしないために見逃されやすい傾向があります。
そのため、日頃から愛猫の「いつもの様子」をしっかり覚えておくことが、早期発見・早期治療につながります。
また、「なんとなくおかしいな」と感じたときは、スマートフォンなどで様子を動画に記録しておくと、診察時にとても役立つことがあります。
診断方法について
FIPの診断は、診断がとても難しい病気のひとつです。
というのも、明確に「FIPです」と確定するための検査が限られており、症状も他の病気と似ていることが多いため、診断には慎重さと総合的な判断が求められます。
FIPの診断では、ひとつの検査だけに頼るのではなく、いくつかの検査を組み合わせながら進めていく「除外診断」という方法が一般的です。
これは、FIP以外の可能性を一つずつ除外していくことで、よりFIPに近い診断にたどり着こうとする考え方です。
具体的には、以下のような検査を行います。
◆血液検査
血液の中にあるたんぱく質(総たんぱく質、アルブミン、グロブリン)のバランスを確認します。あわせて、SAA(血清アミロイドA)という項目を測定することで、体の中に炎症が起きていないかを調べます。
◆超音波検査
お腹や胸の中に液体(腹水や胸水)がたまっていないかを確認します。
◆腹水・胸水の検査
実際にたまっている腹水や胸水を少量採取し、色・性状・量などを詳しく調べます。この検体は、抗体検査や遺伝子検査に使うこともできます。
◆抗体検査
採取した腹水・胸水、または血液から、猫コロナウイルス(FCoV)に対する抗体の量(抗体価)を調べます。抗体価が高い場合、感染の可能性が高まります。
◆遺伝子検査(PCR検査)
腹水・胸水、または必要に応じて眼房水(目の中の水)や脳脊髄液、血液を採取し、猫コロナウイルスの遺伝子が存在するかを詳しく調べます。
治療法
これまでFIP(猫伝染性腹膜炎)は、「発症すると治療が難しい病気」とされてきました。しかし近年では、抗ウイルス薬の登場により、回復が期待できるケースも増えてきています。
特にモルヌピラビルをはじめとした抗ウイルス薬が、FIP治療の選択肢として注目されています。
ただし、FIPの治療はまだ比較的新しく、現在も研究が進められている段階です。そのため、使用する薬や治療の方針については、獣医師とよく相談したうえで進めていくことが大切です。
<治療期間について>
抗ウイルス薬による治療は、通常84日間(約12週間)を目安に行われます。
この期間中、たとえ症状が改善しても途中で治療をやめてしまうと再発のリスクが高まるため、最後まできちんと治療を続けることが重要です。
<通院と経過観察>
治療中、猫の容態が安定していれば入院の必要はありませんが、薬の効果や副作用の有無を確認するために、定期的な通院によるモニタリングが必要です。
通院の頻度や検査の内容は、猫の体調や治療の進み具合によって変わることがあります。
<個別に合わせた治療が必要>
FIPの症状や薬への反応には個体差があり、すべての猫に同じ治療が当てはまるわけではありません。
獣医師と連携しながら、愛猫にとって最適な治療方針を一緒に考えていくことが大切です。
なお、病気が進行し、末期のFIPと診断される場合には、根本的な治療が難しくなることもあります。
そのようなケースでも愛猫が苦しまず、穏やかに過ごせるようにする「緩和ケア(ホスピスケア)」という選択肢もあります。
このような時期には、猫にとって何が一番幸せなのか、どのように過ごしてあげるのが良いのかを、飼い主様と獣医師が一緒に考えながら支えていくことがとても大切です。
FIPと診断された猫と飼い主様へ
FIPを発症した猫にとって、最も心強い存在は毎日そばにいる飼い主様です。
治療中は、できるだけ安静に過ごせるよう配慮しながら、栄養バランスのとれた食事や、決められたお薬をきちんと与えることが大切です。
とはいえ、「愛猫に元気になってほしい」という強い気持ちがある一方で、毎日のケアや不安な気持ちが飼い主様ご自身の負担になってしまうことも少なくありません。無理をせず、周囲のサポートを上手に頼ることも大切です。
わからないことがあったときや、気持ちが追いつかないときには、獣医師やスタッフに相談してみてください。
また、FIPの治療では、抗ウイルス薬を一定期間(通常84日間)使用しますが、「薬を飲み終えたらすべて完了」というわけではありません。
症状が改善しても体調が安定しているかを確認し、再発の兆候がないかを見守ることがとても重要です。
FIPに関するよくある質問(Q&A)
Q.FIPは他の猫にうつる病気ですか?
A.FIPは、猫コロナウイルスが体内で変異することで発症する病気です。
この変異は猫ごとに個別に起こるため、基本的には他の猫に直接うつることはありません。
ただし、猫コロナウイルス自体はうつることがあるため、多頭飼育の場合は衛生管理を心がけましょう。
Q.治療費はどのくらいかかりますか?
A.FIPの診断には複数の検査が必要で、治療も継続的に行っていくため、どうしても費用が高額になりがちです。
詳細なお見積もりについては、猫の状態や必要な検査によって異なりますので、まずは一度ご相談ください。
Q.治療の成功率はどのくらいですか?
A.治療薬の効果は、猫の体力や発症のタイミング、症状の進行具合によって大きく異なります。
同じような症状でも、よく反応する猫もいれば、なかなか効果が現れにくい猫もいます。
そのため、現時点では「○%の成功率」とはっきり言い切ることは難しいのが現状です。
ただし、早期に治療を開始することで、回復の可能性が高まる傾向があります。
Q.治療期間はどのくらいですか?
A.抗ウイルス薬による治療は、原則として84日間(約12週間)を目安に行います。
この期間中は、症状が改善していても治療を途中でやめないことが大切です。
Q.FIPの予防法はありますか?
A.現在のところ、FIPを確実に予防できるワクチンはありません。
ただし、猫コロナウイルスの感染や発症には、ストレスや免疫の状態が影響している可能性があると考えられています。
そのため、日常の中でできるだけストレスの少ない環境を整えてあげることが、結果としてFIPの予防につながる可能性があります。
まとめ
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、以前は治療が難しいとされていた病気ですが、今では適切な治療によって回復を目指せる「治せる病気」へと変わりつつあります。
そのためには、できるだけ早く気づいてあげること、そして早期に治療を始めることがとても大切です。
「いつもと少し違うな」「ちょっと元気がないかも」そんな小さなサインでも、気になることがあれば、動物病院に相談してみてください。
FIPの治療は決して簡単ではありませんが、猫と飼い主様が一緒に前向きに取り組んでいくことで、希望が見えてくる病気でもあります。
専門の医療スタッフと連携しながら、愛猫にとって最善の選択を一歩ずつ進めていきましょう。
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<参考文献>
Thayer, V., Gogolski, S., Felten, S., Hartmann, K., Kennedy, M., & Olah, G. A.(2022)「2022 AAFP/EveryCat Feline Infectious Peritonitis Diagnosis Guidelines」*Journal of Feline Medicine and Surgery*, 24(8), 813–833. https://doi.org/10.1177/1098612X221118761 (2025年5月30日閲覧)