愛犬の健康を守るために知りたい!|胆泥症について2024年04月01日
胆汁は通常、流れるようなサラサラとした液体成分ですが、さまざまな原因によりこの液体が濃くドロドロの状態に変わることがあり、この状態を胆泥と呼びます。
ほとんどの場合、胆泥症は無症状で健康に悪影響を与えることは少ないですが、胆泥症が進行すると胆嚢に粘液の塊ができる胆嚢粘液嚢腫に発展するリスクがあります。そのため、胆泥が見つかった場合には定期的な経過観察が必要になります。
今回は犬の胆泥症について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.胆泥症とは
2.原因
3.症状
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ
胆泥症とは
胆嚢は消化器系に存在する小さな袋状の臓器です。この臓器の主な機能は、肝臓で作られた胆汁を蓄えて濃縮し、食事の消化が必要なときに小腸へ送り出すことです。
胆汁は脂肪の消化と吸収を助けるために必要で、胆嚢がこの液体を小腸に放出することで、脂肪分解の効率が高まります。
抱える問題の一つに「胆泥症」という状態があります。この病気は、胆嚢内に粘り気のある泥のような胆汁が溜まることで起こります。これは人間にも見られる症状ですが、犬においても同様に発症します。
胆泥は、胆汁が過剰に濃縮されるか、または胆汁の流れが妨げられることによって形成されます。
そして、胆汁の成分がさらに変化して固まり、結石になることもあります。これを「胆石」と呼びますが、犬では胆石症よりも胆泥症が多く見られます。
原因
胆泥症の原因はまだ全て解明されていないものの中高齢の犬に多く見られるため、加齢が関与することが指摘されています。そのため、愛犬が年齢を重ねるにつれて注意が必要です。
さらに、高脂血症や脂質代謝異常がある犬は、胆泥症を発症しやすい傾向にあります。特にミニチュア・シュナウザー、コッカー・スパニエル、ビーグル、シェットランド・シープドッグといった犬種は、リスクが高いとされています。
高脂肪の食事も胆汁の濃度を上げ、胆泥形成のリスクを高める可能性があるため、バランスの取れた食事が重要です。
愛犬の年齢や健康状態に合わせた食事プランを獣医師と相談することが推奨されます。
胆泥症の背景には、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌疾患や胆嚢炎があることがわかっています。特に胆嚢炎は、細菌感染が主な原因であり、他の消化器官の炎症から波及することもあります。
これらの病態が胆汁の性質を変え、胆泥形成を促すことがあります。したがって、これらの病気の管理も、胆泥症を予防する上で非常に重要です。
症状
胆嚢に胆泥が溜まっていても、量が少ない場合には何の症状も示さないことがほとんどです。しかし、病状が進行すると胆嚢炎や肝炎、腸炎、膵炎など他の消化器系の病気を引き起こすリスクがあり、さまざまな症状が現れ始めます。
胆泥症による合併症がある場合、特に消化器系に関連する症状が顕著になり、発熱や食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が見られます。
胆泥が胆嚢から出て胆管を通過する際に障害や閉塞を引き起こすと、黄疸(皮膚や目の白い部分が黄色く見える)と呼ばれる状態に至ることがあります。
さらに重症化すると胆嚢や胆管が破裂し、腹膜炎を引き起こす恐れがあります。この状態になると、命の危険があるため緊急の治療が必要になります。
このように、胆泥症は初期には無症状であっても、病状が進行するにつれて深刻な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、愛犬の行動や健康状態に異変を感じたら、早めに獣医師に相談することが重要です。
診断方法
超音波検査は、胆嚢や胆管の状態を視覚的に把握するのに非常に役立ち、胆泥症を診断する際に最も有効な方法の一つです。
この検査を通して、胆嚢内に胆泥が存在する場合は、胆嚢内が黒く表示される中に白い泥状の沈殿物が確認できます。また、胆嚢の炎症や胆嚢壁の厚みなど、他の異常も検出することが可能です。
血液検査も胆泥症の診断と管理に重要な役割を果たしており、消化に関連する重要な臓器である、肝機能や膵機能の異常がないかチェックできます。
さらに、血液検査を利用して、高脂血症や内分泌疾患など、胆泥症の発生に関連する可能性のある他の健康問題を特定することも重要です。これらの病状は胆汁の濃度や流れに影響を与え、胆泥の形成を促進することがあります。
治療方法
胆泥症の治療方法は、その状態や進行度によって異なります。
胆泥が少量で他に目立った異常がない場合、積極的な治療をせずに経過を観察することが一般的です。この段階では、胆泥が自然に解消されるか、状態が安定するのを待つことになります。
ただし、血液検査で肝機能に異常が見られる場合や、胆汁の流れを改善する必要がある場合は、薬での治療が選択されることがあります。
胆嚢炎や内分泌疾患など、胆泥症の背景にある他の病気がある場合は、これらの疾患の治療を同時に行うことで、胆泥症の再発や進行を防ぐことが重要です。
食事面での対策も重要で、高脂血症の犬には低脂肪食が推奨されます。これにより、脂質の摂取を制限し、胆汁の濃度や流れに影響を及ぼす可能性を減らせます。一方、高脂血症がない場合は、高脂肪・高カロリーの食事を避け、適度な運動を通して健康を維持できます。
なお、重症の胆泥症で薬物療法や栄養管理が効果を示さない場合、胆嚢を摘出する手術が選択されることもあります。
予防法やご家庭での注意点
はっきりとした原因がわかっていないため明確な予防法はありませんが、胆泥症のリスクを減らすために、バランスの取れた食事、適切な体重の維持、そして定期的に運動させることが重要です。
また、胆泥症を含むさまざまな健康問題を早期に発見するために、定期的な健康診断を受けるようにしましょう。
まとめ
胆嚢や肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期は症状がないまま進行することがあります。これらの臓器は、病気がかなり進行するまで耐え、突然症状が現れることがあります。
副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症、高脂血症などの持病を持つ場合は、胆嚢疾患のリスクを高める可能性があるため、それらの治療を行うことが重要です。
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