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猫の咳は病気のサイン?毛玉との見分け方と受診が必要な症状を獣医師が解説2025年10月15日

猫は健康でも吐くことがあるため、ゲホゲホとえずくような様子が見られても「また毛玉を吐こうとしているのかな?」と思われがちです。

しかし、こうした行動が実は咳であり、病気のサインである場合もあります。見過ごされやすい症状ですが、その背景に呼吸器や心臓の病気が隠れていることも少なくありません。

今回は、猫の咳と毛玉を吐く行動との違いをはじめ、咳の原因や注意すべき症状、動物病院での検査や、日常でできる予防の工夫などを詳しく解説します。

■目次
1.猫の「咳」と「毛玉を吐く行動」の違い
2.猫の咳で考えられる主な病気
3.緊急受診が必要な咳のサイン
4.動物病院で行う診断と検査
5.日常生活での予防とケア
6.まとめ

 

猫の「咳」と「毛玉を吐く行動」の違い


猫の咳を正しく見極めるには、まず毛玉を吐く行動との違いを知っておくことが大切です。

<毛玉を吐くとき>
・グルーミングで飲み込んだ毛が胃にたまり、それを吐き出そうとする行動
・「ゲーゲー」「カッカッ」という音とともにお腹が波打つように動く
・内容物に毛玉が混じることがある

<咳をしているとき>
・「ケホケホ」「コンコン」といった乾いた音が多い
・お腹はあまり動かず、首を伸ばすような特徴的な姿勢をとる
・吐き出すものがない、または泡状の液体が少量

ただし、咳と毛玉の吐き戻しは見た目や音がよく似ているため、ご家庭での判断が難しいことも少なくありません。気になる行動が続く場合は、できるだけ早めに受診することが大切です。

ご来院の際には、お腹の動きや吐いたものの有無・回数を記録したり、可能であれば動画を撮影してお持ちください。猫は診察室では緊張して症状を出さないことがあるため、普段の様子を知るための重要な情報になります。

 

猫の咳で考えられる主な病気


猫の咳の背景には、次のような病気が隠れていることがあります。

猫喘息
ハウスダストやタバコの煙などの刺激に反応して、気道が炎症を起こす病気です。発作的に咳が出て、呼吸が苦しそうになることもあります。

猫の喘息についてはこちらから

心臓病(肥大型心筋症など)
特に中高齢の猫や長毛種に多く見られます。咳のほかに、呼吸が浅く速くなる、運動を嫌がるなどの変化が出ることも。初期には無症状のケースも多いため注意が必要です。

猫風邪(上部気道感染症)
ウイルスなどが鼻や喉に感染して起こるもので、くしゃみ・鼻水・咳・目やになどがみられます。子猫や高齢猫、多頭飼育では特に注意が必要です。

気管支炎・肺炎
猫風邪の悪化によって、炎症が気管や肺に広がった状態です。高齢の猫では、食べ物などが気道に入ってしまう「誤嚥」によって肺炎になることもあります。(誤嚥性肺炎)

これら以外にも腫瘍や慢性炎症など、咳を引き起こす要因は多岐にわたります。「咳が続く=病気の可能性がある」と受け止め、早めに診察を受けることが重要です。

 

緊急受診が必要な咳のサイン


次のような症状がある場合は、命に関わるおそれがあります。ためらわずにすぐ動物病院を受診してください。

猫の咳で緊急受診が必要なサインを示すイラスト。呼吸困難、舌や歯ぐきの紫色(チアノーゼ)、激しい咳、夜間の咳、食欲低下や嘔吐を伴う場合の注意点を解説。

口を開けてゼーゼー、ハァハァと苦しそうに呼吸している
舌や歯ぐきが紫色になっている(チアノーゼ)
咳が激しく、なかなか止まらない
咳以外にも、元気がない・食欲がない・嘔吐するなどの症状がある
安静時や夜間にも咳が出る

特に猫は体調の変化を隠しやすいため「いつもと違う」と感じた段階での対応が大切です。

 

動物病院で行う診断と検査


咳の原因を特定するために、段階的に検査を進めます。

▼問診
いつから咳が出ているか、どんな音なのか、どんなときに出るかなどをお聞きします。診察時に症状が出ないことも多いため、ご自宅での様子を動画で記録していただけると、より正確な診断につながります。

▼聴診
肺や心臓の音を丁寧に聴き、異常がないかを確認します。

▼レントゲン
心臓や肺、気管支などの状態を画像で確認し、異常がないかを見ていきます。

▼血液検査
体の中に炎症や負担がないかを確認するために行います。全身状態を把握する大切な手がかりになります。

猫は環境の変化に敏感な動物です。診察室では緊張によって普段とは違う反応を見せることもあるため、ご来院時にはなるべく落ち着ける環境を整えてあげると安心です。たとえば、キャリーの上からタオルをかける、洗濯ネットを使って移動するなど、ちょっとした工夫が役立ちます。

 

日常生活での予防とケア


猫の咳には、日々の環境や生活習慣が影響していることもあります。症状を防いだり悪化を予防したりするためにも、次のようなケアを心がけてみてください。

空気環境の見直し
猫喘息の原因となるハウスダストやタバコの煙、強い香りの芳香剤などは、猫の呼吸器に刺激を与えることがあります。お部屋はこまめに掃除し、空気清浄機の活用も検討しましょう。定期的な換気も効果的です。

湿度の管理
空気が乾燥すると喉や気道が刺激され、咳が出やすくなることがあります。特に冬場や冷暖房を使用する季節は、加湿器などで湿度を50〜60%程度に保つと、呼吸器にとってやさしい環境を整えられます。

ストレスの軽減
環境の変化や音、人の出入りなどがストレスになり、体調を崩すきっかけになることもあります。静かで落ち着ける場所を確保したり、猫が好きな寝床や遊びのスペースを用意して、安心できる環境を保ちましょう。

定期的な健康診断
咳が出ていないときでも、体の中では少しずつ病気が進行しているケースがあります。健康診断では血液検査や画像診断などを通じて、目に見えない異常を早期に見つけることができます。

リアンアニマルクリニックでは、今年も10月から秋の健康診断キャンペーンを実施予定です。呼吸器疾患や心臓病なども検査によって早期に発見できることがありますので、ぜひこの機会にご利用ください。

秋の健康診断キャンペーンの詳細はこちらから

 

まとめ


猫の咳は「毛玉かな?」と見過ごされやすい症状のひとつです。しかし、その背後には呼吸器や心臓の病気が隠れていることもあるため、注意深い観察と早めの受診が重要です。

ほんのわずかな変化でも、早めに気づいて適切に対処することで、病気を悪化させずにすむケースも少なくありません。病気を早い段階で見つけて治療に取り組むことが、愛猫の快適な暮らしを支えるカギとなります。

気になる咳が続くときは、まずは一度ご相談ください。

 

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