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【犬・猫のかゆみ】掻きむしる前に知りたい原因と受診のタイミングを獣医師が解説2025年11月01日

「愛犬が足先をしきりに噛んでいる」「愛猫の皮膚に赤みが出てきた」

こうした“かゆみ”のお悩みは珍しくありません。命に関わるケースは少ないものの、強いかゆみは犬や猫に大きなストレスを与え、日常生活の質を下げてしまいます。だからこそ、早期発見と適切な治療が大切です。

今回は犬や猫のかゆみについて、その原因や症状、受診の目安、診断・治療の流れ、ご家庭でできる工夫について獣医師が解説します。

■目次
1.皮膚のかゆみのサインと原因
2.動物病院を受診する目安
3.診断|当院でのアプローチ
4.治療の流れ
5.ご家庭でできる工夫と予防
6.まとめ

 

皮膚のかゆみのサインと原因


犬や猫が皮膚にかゆみを感じたとき、その様子は単に「掻く」だけにとどまりません。いろいろな行動や皮膚の変化として表れ、背景にはさまざまな病気が隠れていることもあります。

<かゆみによる行動の変化>
これらの行動が続くと皮膚を傷つけ、さらに症状を悪化させることもあります。

前足や後ろ足で引っかく
皮膚をしつこく舐める
家具や床に体をこすりつける
足先や皮膚を噛む

<皮膚に表れる症状>
皮膚に目に見える変化が出ることも多く、観察の重要なポイントになります。

赤み(発赤)
ブツブツ(丘疹)
毛が抜ける(脱毛)
フケが増える
ベタつきやにおい

これらの行動と見た目の変化が組み合わさることで、かゆみの程度や原因を推測する手がかりになります。

<かゆみの背景にある主な原因と代表的な疾患>
こうした行動や皮膚の変化の背景には、いくつもの原因が潜んでいます。代表的なものをいくつかご紹介します。

感染症
細菌や真菌(カビ)が皮膚に感染し、炎症やかゆみを起こします。
例)膿皮症、マラセチア皮膚炎、皮膚糸状菌症

アレルギー
食事や花粉、ハウスダストなどに免疫が過剰反応してかゆみを引き起こします。ノミやダニも代表的な原因です。
例)食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、ノミ・ダニ皮膚炎

犬・猫のアトピー性皮膚炎についてはこちらから

先天的な要因
生まれつき皮膚のバリア機能が弱く、トラブルが起こりやすい体質の子もいます。
例)脂漏症

ストレスや行動性の要因
精神的な負担から、毛を舐め壊すなどの行動が繰り返され、皮膚炎を悪化させることがあります。
例)舐め壊し

このように「かゆみ」と一言でいっても、その背景にはさまざまな病気や要因が隠れているのです。

 

動物病院を受診する目安


犬や猫のかゆみは、少し様子を見てよいのか、それとも病院に連れて行った方がいいのか、判断に迷うという飼い主様も多いのではないでしょうか。次のような状態が見られるときには、受診をおすすめします。

犬と猫のかゆみの受診目安を示すイラスト。左から「症状が長引く(2〜3日経っても治まらない)」「症状が強い(出血している、一日中気にしている)」「生活に支障が出ている(食事中や睡眠中もかゆがる、元気や食欲の低下)」の3項目を犬と猫のイラストで説明している。

症状が長引くとき
2〜3日経ってもかゆみが治まらない場合は、早めの受診を検討しましょう。

症状が強いとき
引っかいて出血してしまう、一日中気にしているなど、かゆみが強いと体への負担が大きくなります。

生活に支障が出ているとき
食事中や睡眠中にもかゆがる場合、体力の消耗につながります。また、元気や食欲の低下、体重減少など全身の変化を伴うときは内科的な病気が関わっているおそれもあります。

こうしたサインが見られたら、早めに動物病院へご相談ください。早めに対応することで、症状の悪化を防ぐことにつながります。

 

診断|当院でのアプローチ


かゆみの原因を正確に突き止めるには、段階を踏んで丁寧に確認していくことが大切です。当院では日本動物病院協会(JAHA)の内科認定医として、診断アルゴリズム(診断手順)に沿った体系的な診療を行っています。

問診・視診
まずは飼い主様から詳しくお話を伺い、ご家庭での様子を確認します。
そのうえで、皮膚の赤みやブツブツの有無、症状の広がり方、境界線がはっきりしているかどうかなどを観察し、かゆみの特徴を整理します。

必要に応じた検査
視診で得られた所見をもとに、必要に応じて検査を組み合わせていきます。症状や経過から優先度の高いものを選び、段階的に進めていくのが特徴です。代表的な検査には次のようなものがあります。

皮膚検査:皮膚掻爬検査や抜毛検査などで、細菌・真菌(カビ)、寄生虫の有無を確認します
細胞診・病理検査:皮膚の細胞を調べ、炎症や腫瘍の可能性を評価します
アレルギー関連検査:血液検査や除去食試験などで、特定のアレルゲンが関与しているかどうかを確認します

このように、必要な検査を段階的に選びながら原因を一つずつ絞り込み、最終的な確定診断へとつなげていきます。

 

治療の流れ


診断の結果をもとに、その子にとって最も適した治療を選び、ご提案します。

<原因に応じた治療例>
感染症:抗菌薬や抗真菌薬を使用して炎症を抑えます
アレルギー:炎症を抑える薬の投与に加え、スキンケアや生活環境の調整を行います
皮膚環境の改善:薬用シャンプーや保湿ケアで皮膚のバリア機能を整えます

皮膚トラブルは回復までに時間がかかることが多く、症状によっては1か月以上の治療が必要になる場合もあります。そのため治療の経過を確認するために定期的にご来院いただき、皮膚の状態やかゆみの程度を見ながら薬や治療内容を調整していきます。

また、アレルギーやストレスが関わる場合には再発のおそれがあるため、ご家庭でのスキンケアや環境整備も大切です。当院では再発を防ぐ工夫についてもご提案し、愛犬・愛猫が快適に過ごせるようにサポートしています。

 

ご家庭でできる工夫と予防


皮膚は毎日の暮らしや季節の影響を受けやすい部分だからこそ、ちょっとした変化を見逃さず、生活環境を整えることがかゆみ対策の第一歩になります。

定期的なシャンプーやブラッシング
汚れや余分な皮脂を落として清潔を保つことが大切です。皮膚が弱い子には低刺激のシャンプーを選ぶなど、その子に合った方法を続けてあげましょう。

皮膚に配慮したフード
食事は皮膚の健康にも影響します。皮膚にやさしい成分を含むフードを取り入れたり、獣医師の指導のもとで除去食を試したりすることで、かゆみの原因を減らせる場合があります。

清潔な生活空間
室内の掃除寝具の洗濯をこまめに行うことで、ノミ・ダニ、ホコリ、花粉といった刺激を減らすことにつながります。

ストレスの軽減
生活リズムを安定させたり、安心できる居場所を用意してあげたりすることも、かゆみの予防に役立ちます。

これらのご家庭でのケアに加えて、定期的な健康診断を受けることで、飼い主様では気づきにくい小さな変化を早めに見つけることができます。血液検査や皮膚検査を通じて病気の兆候を確認しておくことは、治療の選択肢を広げ、症状の進行を防ぐ助けになります。

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また、しつこい舐め行動や脱毛、においの変化などは慢性化や再発につながるサインになることがあります。皮膚のトラブルは繰り返しやすいため、気になる変化を見つけたら、どうぞお早めにご相談ください。

 

まとめ


犬や猫の「かゆみ」は一見よくあるトラブルのように思えますが、その背景には感染症やアレルギーなど、さまざまな病気や原因が隠れていることがあります。行動や皮膚の変化を早く見つけてあげることが、症状の悪化を防ぐ第一歩です。

当院では、丁寧な問診と必要な検査を通じて原因を一つずつ明らかにし、その子に合わせた治療や再発防止のケアをご提案しています。気になるサインがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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