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犬の膵炎とは?|愛犬が繰り返し吐くときに考えたい原因と治療法2024年10月01日

膵炎という病名はあまり聞き慣れないかもしれませんが、愛犬が急に何度も吐くような場合、この病気の可能性があります。

膵炎は、突然激しい症状が出ることもあれば、ほとんど症状がなくても慢性的に炎症が続く場合もあるため、定期的な健康診断で膵臓の状態をチェックしておくことが大切です。

今回は犬の膵炎について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

■目次
1.膵炎とは
2.症状
3.原因
4.診断
5.治療法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ

膵炎とは


膵炎とは、膵臓(すいぞう)という臓器に炎症が起きる病気です。
膵臓は胃や十二指腸と隣り合って位置し、消化を助ける酵素を分泌して、タンパク質、炭水化物、脂肪を分解する重要な役割を担っています。

通常、膵臓はこれらの消化酵素を膵管を通して十二指腸に送りますが、何らかの原因でこの酵素が膵臓内で活性化されてしまうと、膵臓自体を傷つけて炎症を引き起こすことがあります。これが膵炎であり、犬の体にさまざまな症状を引き起こす原因となります。

膵炎は、進行の仕方によって「急性膵炎」と「慢性膵炎」の2つに分けられます。
急性膵炎は嘔吐や下痢、食欲不振などが急に現れ、速やかな治療が必要なケースが多いことが特徴です。
一方、慢性膵炎は、炎症がゆっくりと進行し、症状が軽いため気づかれにくい場合が多いですが、放置すると膵臓に慢性的なダメージを与える可能性があります

犬では、急に症状が現れる急性膵炎が比較的多く見られます。

 

症状


膵炎を発症した犬では、以下のような消化器に関係する症状が見られます。

繰り返し起こる激しい嘔吐
下痢
食欲不振
発熱(膵炎による炎症が全身に影響を及ぼすことで、発熱が起こることがあります。)
腹痛(犬が伏せてお尻だけを上げる「お祈りポーズ」をとることが多いのが特徴です)

これらの症状は、急性膵炎の場合は突然現れることが多いです。一方、慢性膵炎では目立った症状が現れないこともあり、健康診断で偶然見つかることがあります。

 

原因


犬の膵炎は、以下のものが原因で発症するといわれています。

高脂肪の食事を与えすぎること
高脂肪の食事は膵臓に過剰な負担をかけ、消化酵素が過剰に分泌されることで膵炎を引き起こしやすくなります。そのため、特に肥満傾向の犬や高齢の犬には、脂肪分の高い食事を避けることが重要です。

薬の副作用
L-アスパラギナーゼ(抗がん剤)、臭化カリウム(抗てんかん薬)など

ホルモンの病気
甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、糖尿病など

遺伝
急性膵炎はテリア種やコッカー・スパニエルに多く、慢性膵炎はキャバリアやコリーに多いとされています

その他の要因
肥満や加齢も膵炎の発症リスクを高めます。

 

診断


動物病院では、一般的な身体検査に加えて、血液検査や超音波検査の結果をもとに膵炎を診断します。

身体検査:おなかに痛みがある場合、右の上腹部に触られるのを嫌がり、普段はおとなしい犬でも怒ることがあります。聴診器で腸が動く音を確認することもあります。

血液検査:Spec cPL(膵臓から分泌されるリパーゼの量を測る項目)やCRP(炎症反応の強さを測る項目)を調べます。
ただし、これらの数値が高いだけでは膵炎と断定することはできません。

超音波検査:膵臓の大きさや、周囲の脂肪組織、十二指腸の粘膜の厚みなどを観察します。特に、十二指腸にコルゲートサイン(腸壁がヒダのように波打っている様子)が見られる場合は、膵炎の可能性が高いと判断されます。

 

治療法


急性膵炎の場合は、炎症が強く緊急性が高い状態です。下痢や嘔吐を繰り返すことで脱水を引き起こしている可能性が高いため、まずは輸液で体の水分やミネラルを補う必要があります。
また、痛みを和らげるための鎮痛剤や抗炎症剤を使うこともあります。
さらに、犬の場合は急性膵炎の治療に使用できる薬があるため、必要に応じてその利用が検討されます。

慢性膵炎では、炎症が軽く、はっきりとした症状が出ないことが多いです。そのため、積極的な治療よりも、日常生活で膵臓に負担をかけないようにケアすることが大切になります。
具体的には、脂肪分を抑えた食事(低脂肪食)に切り替える食事療法が選ばれることが多いです。この方法は、急性膵炎の症状が落ち着いた後にも適応されます。

 

予防法やご家庭での注意点


膵炎は肥満や高脂肪の食事が原因となることが多いため、ご家庭での食事や運動管理が予防のポイントです。

<食事>
低脂肪食:膵臓に負担をかけないため、脂肪分を極力抑えた食事が重要です。動物病院で処方される低脂肪の療法食が一般的です。

小分けの食事:一度に大量の食事を与えると膵臓に負担がかかるため、1日の食事量を数回に分けて与えると良いでしょう。

禁止する食べ物:高脂肪のもの(バター、クリーム、揚げ物)や、人間の食べ物は避けるようにします。また、脂肪分の多いおやつも控えることが重要です。

<日常的なケア>
適度な運動:毎日のお散歩で適度な運動をさせることも大切です。特に、遺伝的に膵炎が発症しやすい犬種や、ホルモンの病気を持っている場合は、より一層の注意が必要です。

定期的な健康診断:慢性膵炎は進行がゆっくりで、症状が出にくいことがあるため、定期的な健康診断で膵臓の状態をチェックすることが大切です。

 

まとめ


膵炎は、膵臓の炎症によって消化器にさまざまな症状が現れる病気です。急性膵炎は命に関わることがあるため、早急に炎症を抑え、脱水を改善する治療が必要です。
一方、慢性膵炎は明らかな症状が見られないことが多いので、定期的な健康診断で膵臓の状態をチェックすることが重要です。
また、日々の食事管理や適度な運動が、膵炎の予防につながることも覚えておきましょう。

 

■関連する病気はこちらで解説しています
老犬に多い膵臓の病気、糖尿病について|放っておくと命に関わることも
愛犬の健康を守るために知りたい!|胆泥症について

 

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<参考文献>
New insights into the etiology, risk factors, and pathogenesis of pancreatitis in dogs: Potential impacts on clinical practice – PMC (nih.gov)

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